賞金首の情報を得て、すぐさま宿を出発した。時刻は正午。
おそらく今日も、片づけた山賊のアジトで夜を過ごすことになるだろうと予想する。
宿の女将の話では、途中クラックスタスクキープという、オークの山賊団が巣くう砦跡があるらしい。
道なりに山の中を進むと、それらしき砦の廃墟が見えてきた。
今回はあちらの山賊は賞金対象になっていない。余計な時間はとるまいと、道を逸れて砦から離れることにした。
ところがである。
突如として重々しい空気の塊が上空をよぎり、それが私の目の前にドスンと着地した。
もしかしてこのドラゴンは、先日ファルクリース上空を飛び回っていた奴なのだろうか。
これには完全に虚を突かれる。私の今日の予定は、「ハイキング気分で山賊退治」だけだったのだから。
我に返って素早く持ち物を確認した。回復薬は、昨日仕入れたものが少しだけだがある。
しかし森の中でドラゴン相手に立ち回るのは、あまりに不利だ。向こうは空を飛び回り、森ごと焼き払う勢いでこちらに炎を吐きかけてくる。
私はすぐさまクラックスタスクキープへ引き返した。
焼き払いやすい標的を見つけ、ドラゴンの注意がこちらから逸れる。しかし逸れたところでこちらは飛び道具を持っていないから、見ていることしかできない。
砦の方は、突然の襲撃に大混乱状態である。矢を射かけているようだが、ドラゴンを打ち落とすほどの威力はない。それどころか、放たれる矢の本数が見る間に減っていく。射手が炎に巻かれてやられたのだ。
やはり山賊ごときにドラゴン退治は無理か。
ナイフポイントリッジは、ここから比較的近い。
いっそあのドラゴンに、あそこの山賊達も焼き払ってもらうとしよう。一戦交えているうちに、奴も疲れて地上に降りようという気になってくれるかもしれない。
森を飛び回るドラゴンの気をひきつつ、私は目的地へと走った。
移動中も、ドラゴンは目につく獣を焼き払い、全てを業火に包んだ。山賊野営地までの道中、民家が一軒もなかったのだけが救いだ。
そして山の上の野営地を見つけたドラゴンは、その上空で思う存分暴れまわった。
ドラゴン襲撃で混乱状態になったナイフポイントリッジへと乗り込んだ。見張り台にいたらしい射手は、すでにドラゴンの攻撃を受けていたのか、単に驚いて足を滑らせただけか、地面に落ちて事切れていた。
山賊達はドラゴンの相手で手いっぱいで、誰も私のことなど気にも留めない。
適当な物陰に素早く身を潜め、しばらく事の成り行きを見守った。ところがドラゴンが完全に優勢だったらしい。あたりが静かになったかと思えば、山賊達は全滅している。これで山賊退治の手間は省けた。あとはこの騒動の後始末を私がせねばならない。
野営地の広場に着陸して獲物の姿を探していたドラゴンへ、挨拶代わりのフロストブレスを吹きかける。
山賊の射手達も相当頑張っていたが、ドラゴンを地面へ縫い付けるほどのダメージは与え切れていなかった。私自らの拳で、二度と飛び立てないよう少しずつ体力を削るしかないようだ。
元気いっぱいのドラゴンを前に、手持ちの回復薬はすぐに底をついた。
迷いながらも、私はヒストの力を解放した。ドラゴンの攻撃が受けた端から回復していく。この間に奴の体力を削れるだけ削った。
ここで確実に地面へ留め置かなければ、永遠に戦闘は終わらなかったはずだ。
日が落ち、月が高く上る頃、ようやくドラゴンは飛ぶことをあきらめる。
私もヒストの力を使い果たした。ドラゴンの炎をわずかでも弱めようと、ラベンダーやリュウノシタをほおばり続ける。あの炎をひと浴びでもしようものなら、魂の半分くらいが蒸発するほどの痛みなのだ。鱗の下に水ぶくれができたらどれほどの痛みか、想像してもらいたい。
しかしこちらが壁の裏に隠れて炎の痛みが治まるのを待てば待つほど、その間にドラゴンも体力を回復してしまう。
戦況が一進一退になってしまえば、本当にらちが明かない。長く続く戦闘の疲労に一瞬気を失いかけた。
目の前に星々が浮かぶ。かと思えば次の瞬間、私はまるで生まれ変わったように、あらゆる活力を取り戻していた。
拳を握りしめ、一か八かの特攻を仕掛ける。炎を吐こうとするドラゴンの鼻面を盾で殴り飛ばし、辛勝を収めた。今回の被害は、山賊砦と山賊野営地、道中のオオカミ2頭、鹿数匹だ。兎やキツネもいたかと思う。山賊達がいなければ、勝てなかった。正確には山賊達が建てた、ドラゴンの業火を受けてもびくともしない木製のバリケードがなければ、私はずっと昔にトカゲの黒焼きになっていた。
この体たらくを見るに、私はドラゴン退治には向いてないのだろう。ドラゴンボーンはシャウトが使え、ドラゴンの魂を吸収することはできるが、ドラゴンスレイヤーとはまた別物なのだ。スレイヤーとしての素養が十二分にあるのは認めるが。
日はすっかり落ち、ドラゴンも骨になったが、最後の仕事が残っている。
ナイフポイントリッジの鉱山内に残っている山賊達だ。といっても、山賊長ただ一人だった。
山賊といえどその頭ともなれば、熟練の傭兵も敵わない剛の者が多い。
しかしつい先ほどドラゴンと殴り合っていた私には、人間など怖くもなんともなかった。
勝負はすぐについた。これでようやく今日の予定が終了した。
ドラゴン襲撃により死屍累々となった野営地で、焼いたキジ肉、リンゴ、パン、エールのささやかな夕食をとる。
それにしても、この調子でスカイリムをドラゴンの脅威から救えるのだろうか。ドラゴンボーンというだけで、ホワイトランの首長などは私に期待を寄せているようだが。シャウトにしても、すすんで修行をしたわけでもなく、いつの間にか身についていた力だ。
思うに、望んでもいないのにウェアウルフとして生きるしかなかったシンディングの苦悩が、少しだけ分かる気もしないではない。ファルクリースに戻ったら、もう少し話を聞いてみるか。
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1. よくある出来事が劇的。
最近できる限り(リアルが忙しくなく時間がとれる時)はFTをせずUni様のMOD盛り盛りで従者(RP上はご主人様方)と共に馬を駈り、スカイリムの地を駆けまわってます。 FTを多用すると劇的体験をする機会が失われてしまうってことに最近になって気づきました フィールドをさ迷ってこそがRPGの醍醐味ですかね(笑)
賞金首クエストもRP上やりたいんですがねぇ PC版にはあるのかわかりませんがCS版ではドーンスターの賞金首が巨人だったときに報告しても「クエストログに残り続ける」バグがなんかイヤで 手を出してないんですよ… どうやらPS4版には修正MODを作ってらっしゃる方もいらっしゃらないようなので…(涙)
なんで巨人のときだけなんでしょうね?
なにはともわれ これからの冒険譚が楽しみで仕方ないです!!次回を楽しみにしております。
Re:よくある出来事が劇的。
そういえばドーンスターの巨人退治クエストには、そういうバグがありましたね。すっかり忘れてました。PS4で修正されてないということは、Scriptを書き換えないと直せないレベルのバグなのかもしれません。ドーンスターで従士になるまでは、巨人討伐系の賞金クエストは避けておこうと思います。とはいえうちのトカゲドヴァキンはまだレベル低すぎて、巨人に挑むなんて夢のまた夢ですが。この調子でアルドゥイン倒せるのか不安ですけど、とりあえずはハーシーンクエストのクリア目指して頑張ります!