気持ちの良い朝だ。早朝の空気ゆえに鱗を刺す寒さだった。秋も終わりのころで、じきスカイリムには本格的な寒さがやってくる。この季節の寒さに弱音を吐いているどころではない。
今日はロリクステッドを目指す。道のりは比較的安全だが、遠い。このくらいの時間に出ないと、向こうにつくのが夕方かそれ以降になってしまうのだ。
西の塔に差し掛かるころ、日が昇って少し寒さが和らぐ。今日は一日良い天気に恵まれることだろう。
ステンヴァールはホワイトランの治安の良さを知っているから、道のり安全、天気も良好という今日の素敵な旅路に少々物足りなさを感じているようだ。
昼食中の山賊に出くわさないかと軽口をたたく始末である。これではどちらが山賊か分かりはしない。
私としては妙な輩に会うことなく、お日様に照らされて道を歩けるほうが好きだ。
むろんつつがなく今日の旅を終えるなど、いくら安全なホワイトランでも無理なわけだが。
私に襲い掛かったハイエルフのウィザードに、退屈していたステンヴァールが喜び勇んで突進した。
ウィザードは魔法の盾を使うものだと思っていたのだが、このハイエルフは鉄の盾を持っていた。マジカの節約か、単に魔法の盾の呪文が苦手だったかは定かでない。尋ねる前に、ステンヴァールに切り伏せられて動かなくなってしまったからだ。鉄の盾も大して役に立たなかったな。
それにしても最近襲われる回数が増えた気がする。やはり誰かが私に賞金でもかけたのだろう。
ハイエルフに襲われて以降は、しばらく穏やかな旅が続いた。
裕福な身なりの貴族らしき男は、護衛一人のみを連れての気楽な道のりだ。
旅のカジートも道の端でのんびりくつろいでいる。のどかだ。
ファルクリースへの分岐路付近も平和だった。以前はこの近くの竜の墓から竜が飛び立ち、散々てこずらせてくれたものだ。
竜の墓はロリクステッド近くの山にもあった。まだ復活していなければいいのだが。
そして今日最後の面倒はといえば、追剥カジートだ。
最初は金目の物を出そうにも、金がないので何も出せなかった。金がないといっても信じてもらえなかったのが辛かった。
今では少々持っている。持ってはいるのだが……。
やはり素直に「どうぞ」と金目の物を出してやれないのが、心苦しいところだ。こちらもカツカツなのでな。
追剥の懐を探ったステンヴァールが、私より追剥のほうが金持ちだったことを報告してくれる。
やれやれ。いつの日か金持ちになって、正々堂々「金は捨てるほどあるがお前にはやらん」と言えるようになりたいものだ。
昼過ぎ、ようやくロリクステッドへ到着した。見たところ、山の上の竜の墓も静かだ。
ドラゴンの心配がなくなったところで、ステンヴァールに村の若者を見立ててもらおうか。例の若者は、今日も畑で農作業に精を出していることだろう。
畑に行く道すがら、私は配達人につかまった。首長からの手紙を預かっているという。
バルグルーフ首長だろうかと思えば、ファルクリースのシドゲイル首長からだった。
噂で私のことを知ったようだが、サルモール大使館のパーティーで彼を見たような気もする。あの大使館での騒ぎに私が関わっていたと彼は知っているのだろうか。私に関するスカイリムでの名声なんて、あの騒ぎでの悪評くらいしか思いつかないのだが。ホワイトラン西の塔でのドラゴン退治は、しょせんホワイトランのみでの一時的な話題にしかならなかったようだし。
手紙のことはともかくとして、くだんの若者は畑で農作業に専心していた。しかし話を聞けば冒険への情熱は決して冷めてはいない。
村での退屈な生活に辟易しながらも、退屈な日課を手抜かりなくこなしていく姿には好感が持てる。
ステンヴァールからの評価も上々で、芯がしっかりしている奴だから挑戦したいものにガンガン挑戦させても心配ないとのこと。そして冒険は若い時分にしかできないものでもある。
エリクの父親に相談してみると、彼は息子の無鉄砲さを心配しながらも、いくつか条件を出してくれた。
まずは、エリク自身がスカイリムで生き抜く戦士としての器量をもっているかどうか、確かめたいということ。そして身を守るための鎧を買う金を、どう捻出するかということ。
父親の出した条件は、エリク自身を山賊退治に同行させることで全て満たせそうだ。戦闘もできるし、退治の報酬を執政にねだることもできる。むろん、退治した山賊自身からもいくらかの心づけを徴収できることだろう。
宿の主人として、また元兵士として、旅の冒険者を見慣れている父親は、ステンヴァールをちらりと見た。そして彼が一緒なら、山賊退治に息子を同行させてもいいと同意した。
さすがはスカイリム最強の傭兵だ。立っているだけで熟練の傭兵たる雰囲気を醸し出し、相手を安心させるのだから。
エリクの喜びようは言うまでもない。
現在賞金がかかっている山賊のアジトは、ホルテッド・ストリームの野営地だ。ホワイトランの町の北に位置するため、一度ホワイトランまで帰る必要がある。
村を出て間もなく、私達はドラゴンを目撃した。飛んできた方角を見るに、ロリクステッド近くの竜の墓から蘇った個体ではなさそうだ。
こちらが固唾を飲む中、ドラゴンはひとしきり上空を旋回して東へ飛び去って行った。
三日前も様子見だけで飛び去って行ったのがいたが、あれと同じなのだろうか。同じ爬虫類風容貌仲間でも、ドラゴンの見分けは難しい。
ステンヴァールも私も、ドラゴンとの戦闘となるとエリクの護衛は難しくなる。ドラゴンが飛び去ってくれて正直ほっとした。
私達のそんな心配をよそに、エリクの興奮はとどまることを知らない。何しろ物語でしか登場しないようなドラゴンを目撃したのだ。ロリクステッドにいたら絶対あんなものにはお目にかかれないと感激していた。ホワイトランでのドラゴン騒動も、あの村では尾ひれだらけの眉唾な噂として片付けられていたようである。
伝説が蘇っても、世界各地にその姿を現してくれないと誰も本気で信じないものらしい。
ロリクステッドの住人は村人の代表にホワイトランでの買い物を一括して頼むため、エリクも自身でホワイトランを訪れるのは初めてだそうだ。
道で見るすべてに感激している。巨人をこんな近くで見るのも初めてだとか。そうだろう。もう少しでも近づいた人間は、たいがいエセリウスへ物理的に直行して帰ってこないことが多い。
日が暮れてきた。
無理をして歩いても、ホワイトランにつくのは深夜を軽く過ぎてしまう。どこかで野営するとしよう。
エリクにとって、今日は驚きに満ちた一日になったようだ。そして冒険者見習いになった初日にドラゴンを見たという幸運も、彼の運の強さを示しているように思われる。勝負師同様、運は冒険者に欠かせない才能の一つだ。
そして私にとっての僥倖は、この若者がいらぬ遠慮もせずベイクドポテトをふたつも平らげてくれたことだった。私以上に芋を食いなれているのかもしれない。
書き残すまでもなく、私の夕食はベイクドポテトと蜂蜜酒だった。
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1. 無題
私の中のエリクはただのワガママボーイだったのですが、プレイする人が違うと立派な夢を持った若者に見えてしまう不思議(笑)
スカイリムでゆっくりと妄想に浸りながらずっと旅をしていたいのですがなかなか時間がとれずuni様のブログで欲望を満たしております。
これからも無理をなさらず、タロスの祝福あれ!
Re:無題
エリクはぱっと見、典型的な「刺激的な生活に憧れる田舎の若者」ですよね。でもジュアンとの立ち話で、新しい剣を買うのにお金を貯めている話が聞けるので、地道な努力のできるいい子みたいです。同村のエニスも養母に「ホワイトラン行きたい」とわがまま言ってるのですが、それも商売を考えてのことで遊びに行きたいわけではない。どうもロリクステッドには、野心的で真面目な若者しかいないっぽいです。……ロキール以外は。
ちまちまとですが日記もこの調子で続けていくつもりです。目下の悩みは、戦闘音痴な自分に素手でアルドゥインが倒せるかどうか。素手プレイはじめたときはそこまで考えてませんでした。素手攻撃の上手な人の動画見て動きを研究してますけど、全然マネできてません(笑)