ダークウォーター峠。
前回はこの奇妙な生き物の毒付き武器で逃げ帰ったが、今回は大勢の屈強な仲間を連れての再挑戦だ。そう簡単には負けまい。
入り口付近にいた1体を撃破。
アネックの話によると、この生き物はファルメルというらしい。このようなジメジメした洞窟に住んでいて、白い肌と退化したような眼を持っているのが特徴だとか。
洞窟は青白い幻想的な光に包まれている。どうやら洞窟内の壁に青く輝く鉱石が含まれているのと、不思議な光るキノコの胞子がこのような光景を作り出しているようだ。滝から上がる水しぶきもそれらに照らされている。
景色は息をのむほどに美しい。そして情け容赦ないファルメルと、それが飼っているらしいシャウラスとかいう虫は非常に気味の悪い姿をしている。何とも皮肉な対比だ。
素手で戦う私は極力触りたくない気持ちになってきた。しかし我が仲間である屈強な女戦士三人衆は、ファルメル以上の残忍さで彼らをあっという間に倒してしまった。
それにしてもこの洞窟は、景色だけでなく今までにない雰囲気もある。ジェナッサはなにか不気味な感想を漏らした。
邪悪な力とは、やはりファルメルに関係しているのだろうか。そもそも連中は人の姿をしているのに、こちらと話をしようともしてくれない。言葉を理解できないのか、自分達種族以外の者と交流する気すらないのか。
しかし知能がないというわけではない。シャウラスの殻で作った手の込んだ服を着ているし、魔法を使ってくる者もいる。
今しがたリディアが仕留めたファルメルは、女性と思われる。なかなか個性的な髪形をして、それなりにおしゃれをしているようだ。
しばらく先を行くと、ノルドの遺跡らしきものに突き当たった。スカイリムは掘ればノルド遺跡が出るようなところだから、珍しくはない。それにここは昔から峠を越える通路にもなっていた洞窟らしいので、遺跡が残されていても不思議ではないだろう。
ところで落とし戸の下にアルゴニアンの姿があるのに気づいた。ファルメル達に捕まっていたのであろうか。
下にいたアルゴニアンがレバーがどうのと言っている。これのことか。
ファルメル達はこのレバーを使いこなして、アルゴニアンを下に閉じ込めていたようだ。
やはりあの連中、それなりに知能はある。
私がレバーを下げると、アルゴニアンはこの瞬間がよほど待ちきれなかったのだろう。私と顔を合わせるのももどかしく、壁越しに話しかけてきた。どうやら彼がデルキーサスだったようだ。
行方不明からかなり日にちが経っていたが、無事でよかった。ファルメル達に水のたまった牢屋に入れられたらしいが、アルゴニアンなのでそれは一切苦痛ではなかったそうだ。
彼は滝を泳いでいたところを捕まったらしい。ダークウォーター・クロッシングから見える数段の滝はよほど血が騒いだとみえる。
見たところ、彼の鱗はまだ緑が鮮やかでつやつやしている。少なくとも私よりはかなり若いな。他種族からはアルゴニアンの年齢は分かるまいが。
目的は達成した。後は帰りだ。来た道を戻るのが一番安全だが、アネックは村近くにファルメルが巣くう洞窟を野放しにしておきたくないという。ことのついででもあるし、デルキーサスを入れて戦力は増えている。きれいに掃除して帰ろう。
洞窟内に広がる最後の空間は、まことに見事だった。青く輝く鉱石はまるで星空だ。光を受けて輝く地底湖も、光の海である。
だが見とれている暇はない。ファルメル達もここがお気に入りらしく、数体が固まって襲ってきた。
ここが最後の正念場だ。私は盾を持ち出し、素手から盾殴りに戦い方を変えた。
これで防御しつつ敵を引き付けている間、リディア達に敵の背後をとってもらう寸法だ。ヒストの力を呼び起こせば、毒のついた刃を受けてもヒストによる自然回復の力が上回る。
洞窟を通り抜け、ようやく外の空気を吸う。辺りはすでに真っ暗だ。
私もアルゴニアンだけに、目の前の滝を見ると血が騒ぐ。リディア達には徒歩で帰ってもらって、私はデルキーサスと共に滝下りとしゃれこむことにした。アルゴニアンだけのお楽しみだ。
山賊退治にファルメル退治。かなりハードな一日だったが、疲労もいっぱい、思い出もいっぱいと言ったところか。
ダークウォーター・クロッシングに戻り、仲間達と焚火を囲んだ。今日一日の話が弾む。ハチミツ酒も格別のうまさだ。久しぶりに冒険ができたアネックも、満足したことだろう。
これで今日は終わりだと思っていた。ハチミツ酒を飲む私の耳の脇を、矢が通り過ぎなければ。
最初の一矢は気のせいかと感じたが、膝先の地面に突き刺さった次の矢で、自分が狙われていることに気づいた。
暗がりに目を凝らせば、アネックの家の向こうに人影がある。
そちらがその気なら、こちらもその気だ。
見つかった相手は素早く透明化の薬を飲んだようだが、遅かった。旋風の疾走で距離を詰めた私は、すでに狙い澄まして拳を振り上げ、相手の体をつかんでいたのである。
敵は見覚えのないダンマーだった。しかし持っていた手紙がこれだ。
誰かが殺し屋を差し向けたようだ。思いつくのは、エレンウェン特使くらいか。だとしたら殺し屋を雇って当然だろう。
有名になるというのもつらいものだな。
しかし今日はもうこれ以上何も起きまい。そう願いたいものだ。
前へ |
次へ