手こずるかと心配したが、先制攻撃の氷晶がだいぶ効いたらしい。2、3発拳で殴ったら伸びてしまった。
どこの誰かは知らないが、ついでだ。逃がしてやろう。
この男、リフテンでサルモールに捕獲されたらしい。ドラゴン復活を知る人物もリフテンにいるのだろうか。
ルリンディルの仕事机付近を探すと、調書が出てきた。
サルモールはドラゴン復活について、ドラゴンスレイヤーならではのドラゴンに関する深い知識を有するブレイズを疑っていたようだ。デルフィンはブレイズの生き残りは自分一人と言っていたから、これは彼女にとっても大きな発見ではないだろうか。サルモールに狙われている以上、こちらとしても彼を速やかに保護しなくてはならない。
エズバーンに関する書類を懐に収めると、上の方で物音がした。忍び寄ってみれば、マルボーンが縄で縛られているではないか。
どうやら私が起こした騒ぎで、彼もとうとう捕まってしまったらしい。
いつかはばれると思っていた。
マルボーン、全部終わるまで絶対に頭を上げるな。間違って殴ってしまうからな。
さて、マルボーンはデルフィンと、おそらく私にも立腹していた。なんてずさんな潜入捜査をする奴だと。
しかし私がこうして下手に大暴れしたおかげで、マルボーン逮捕の現場に居合わせることができたのだ。上手く隠密捜査をやりおおせていたら、書類紛失発覚も彼の逮捕も、私が立ち去った後になっていただろう。
デルフィンはともかく、事情を鑑みて私への怒りの矛先は収めてほしい。
さて、脱出だ。
階段下で伸びていたルリンディル第3特使には牢屋に入っていただくことにした。
この扱いを見れば、サルモールも私がブレイズの手先だと確信してくれるだろう。ホワイトラン従士としてパーティーに招かれていた以上、この騒ぎでバルグルーフ首長らに迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
兵士達が死体を捨てていたという穴から全員無事に脱出する。
外はすでに翌日の朝になっていた。
マルボーンはデルフィンに関わるのはもう金輪際ごめんらしい。後は自分の力でサルモールから逃げ切るそうだ。
しかしマルボーンだけでなく私自身、デルフィンにかつがれた気がしてならない。これまでサルモールとは何のかかわりもなかったのに、今回の晩餐会出席で広く顔を売り、サルモールを敵に回してしまった。
二人を見送った後、穴の外で一休みする。そして追手に包囲される前に出発しようかとした矢先。
まさかのドラゴン来襲である。ドラゴン復活の原因を、陰謀に違いないと疑いあう人間とエルフをあざ笑うかのようだ。
私がドラゴンとなぐり合っていると、どこからともなく火球が飛んでくる。
炎の精霊? こんな雪山に天然物がいるはずが……。
炎の精霊の姿が消えたと思ったら、こんどは狼の精霊がこちらを追いかけてきた。
どこかにコンジュラーがいて私を狙っているようだ。ドラゴンボーンを倒して名を上げようという冒険者か。こちらはドラゴン相手で忙しいというのに。
おまけにこの近辺を縄張りにする山賊までやって来た。
ドラゴンも恐れずに両手剣で挑む山賊長。敵とはいえ、あっぱれすぎる冷静さと戦いぶりだ。
ドラゴンを薙ぎ殺した山賊長は、目ざとく林の奥のコンジュラーも見つけ出した。
私は山賊の手下に弓で狙われる。
弓使いをシャウトで吹き飛ばしドラゴンの魂を吸収しているところへ、コンジュラーをぶちのめした山賊長が雄たけびを上げながら戻ってきた。
もうお前が味方なのか敵なのか、さっぱり分からんぞ。とにかく来るなら倒すぞ。
徹夜明けに、三つ巴どころか四つ巴の戦いをこなすことになるとは……。
時刻はまだ午前も早い。仮眠をとったらすぐに移動せねば。
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