しかしアルドゥインはわずかな隙をついて、空へ飛び立ちどこかへ去っていった。
だいぶ追い詰めたと思ったが、盾で殴るだけではこれが限界か。
気が付けば、すでに夜は明けていた。
パーサーナックスはアルドゥインを取り逃がしたことよりも、彼に勝利したことが重要だと話した。
どうやらアルドゥインより強いということを示せたことで、他のドラゴン達を味方につけられる可能性が出てきたというのだ。
ドラゴンの行方はドラゴンに聞け。
つまりアルドゥイン側についているドラゴンを説得し、彼がどこへ逃げたか聞きだすのだ。
ではどこにドラゴンを呼び、説得のために留め置けばいいのか。
パーサーナックスはなじみ深い宮殿の名前を口にした。
ホワイトランのドラゴンズリーチ。あの宮殿は本来、ドラゴンをとらえるために作られたらしい。
しかしうまく捕まえられたところで、どう説得すればいいのだろう。
パーサーナックスはスームだと言った。
そうだった。ドラゴンの議論は、シャウトでやり取りするのだったな。揺るぎなき力にファイアブレス。止めに掟破りのドラゴンレンドで決めれば、論破できそうだ。
そういえばバルグルーフ首長の椅子の上に、ドラゴンの骨が飾ってあった記憶がある。捕まっていたドラゴンの骨なのだろうか。
尋ねると、パーサーナックスは悲しそうにうなずいた。
あのドラゴンを見舞いによく訪れていたらしい。
しかし骨になってしまったとはいえ、ドラゴンはドラゴンだ。私のような者に魂を吸収されていなければ、またいつか復活して再会もできるだろう。
すべてが終わったら、バルグルーフにあの骨を渡してもらうよう頼んでもいいかもしれない。
さあ、次の目的地はホワイトランだ。
徹夜の戦闘で、少々疲れが出ている。下りは幽体化のシャウトで、一気に飛び降りてしまうか。
途中、幽体化の効果が変な時に切れて死ぬ夢を何度か見たが……。
無事にここまであっという間に下山できた。
この崖を飛び降りれば、イヴァルステッドだ。
さあ、ドヴァーキン流のスピード下山だ。
最後くらいは華麗に決めたいものである。
無事に飛び降りると、そこはナルフィの小屋近くだった。
そういえば彼は元気にしているだろうか。季節柄、このあばら家で冬が越せるとは思えないが。
さすがは寒さに強いノルド。
ナルフィは半袖のボロ服で、元気に砕石をしていた。
食事の面倒は宿の主人が見ているらしいが、彼も生活はカツカツだ。冬の間だけでもナルフィを引き取って、温かい家で過ごさせてやれば双方にとっていいのではないか。
そうと決まれば、すぐに宿へ行こう。
宿の主人ウィルヘルムにナルフィを連れて行く断りを入れる。
彼もずいぶん助かるそうだ。冬は巡礼者も少なく、宿も実入りがなくなるからな。
住み慣れた家と村を離れるとあってナルフィは不安そうだった。しかし春になればまた戻れること話すと、この短期のホームステイに楽しみを覚えたようである。
私の家はいいぞ。温かい暖炉と、なんでも持ってくれるたくましい女戦士、そして正義の味方を目指す魔女がいる、愉快な場所だ。
昨日通った道を逆へとたどる。道のりはこれ以上ないほど平和なものだ。狼の一匹もいない。
澄んだ空を楽しみながら何事もなくホワイトランを望む場所まで到着した。
さて、今日は一年最後の日だ。今夜はアルドゥイン戦の疲れを癒しつつ、一年の締めくくりを祝うパーティーでも開こう。
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