星霜の書を手に世界のノド山頂に立つ私を、かつてのフェルディルと重ねたのであろうか。
アルドゥインはかなりの立腹具合で、私をソブンガルデ送りにすると言ってきた。
我を忘れるほどの立腹具合は、私がアルゴニアンであることにすら気づかないことからもうかがえる。
アルドゥインはそのまま飛び去り、遠くから私をファイアブレスなどで焼き殺そうと考えたようだ。
そこへパーサナックスがドラゴンレンドを使えと促す。
言われるがまま、半ば半信半疑で覚えたてのドランゴンレンドをアルドゥインへ向けてはなった。
これにはアルドゥインも誤算していたようである。
山頂に引きずり降ろされたアルドゥインの驚愕と怒りは、どちらかと言えばパーサーナックスへ向けられた。
なにしろあの三英雄にドラゴンレンドを編み出すよう勧めたのも彼ならば、今私に星霜の書を取ってこさせて過去からシャウトを学ぶよう勧めたのも彼なのだから。
たとえアルドゥインでも、地上にいれば私の爪で殴ることができる。
しかしどうだろう。アルドゥインの体に可能な限りぴったりくっついて、自慢の爪で引っ掻こうとしたら、何度やっても空振りするのである。私の手が短すぎるのか。あまりに何度やっても空振りばかりなので、とうとう盾を持ち出すことにした。バッシュなら当たるようである。
……つまり、盾一枚でアルドゥインを倒さねばならぬ。最後まで耐えられるか。錆びだらけの鉄の盾よ。
スタミナを使うシールドバッシュのために、すかさず野菜スープを喉に流し込んだ。
パーサーナックスの援護を受けながら、ひたすらアルドゥインを盾で殴り続ける。
かの三英雄とは全く違った私の戦い方に、アルドゥインも苛立たしげだ。こんなもので我が倒せるのかと、散々使い込まれた中古の鉄の盾をねめつける。
言葉の効果が消えかかれば、すかさずドラゴンレンドを繰り返してアルドゥインを地上に留め続ける。
私はありったけの力を使って盾で殴り続けているのだが、正直言ってパーサーナックスの噛みつき攻撃とブレス攻撃の方がアルドゥインを着実に追い詰めている気がしないでもない。
アルドゥインの怒りは最高点に達していた。
こんな奴がドヴァーキンを名乗るとはと、吐き捨てる。
まことに面目ない。私の手が短かったのがすべての元凶なのだ。第4期最初で最後の、盾で鼻面を叩き潰されて死んだかわいそうなドラゴンになるがいい。
ついにアルドゥインが、いつか聞いたシャウトを放った。ヘルゲンを壊滅させた、隕石を呼ぶシャウトだ。残念ながら、その言葉は私の魂には響かなかった。恐らく本物のドラゴンにしか理解できない言葉で構成されたシャウトだったのだろう。
隕石が降り注ぐ中、私は必死に盾でアルドゥインを殴り続けた。
正面の立ち位置は、パーサーナックスに譲ることにした。ゴルムレイスの二の舞になりたくないというのもあるが、なんとなく私があの正面に立つのはふさわしくない気がしたからだ。
見るがいい。老いたドラゴンと、時を喰らう者の対決を。手の短いトカゲがアルドゥインの鼻先で盾をペシペシしているより、はるかに絵になるではなか。
たびたびパーサナックスが私を励ましてくれるのだが、気遣いは結構。
私はこの盾一枚で常に全力の攻撃を続けている。
こんなことをしているものだから、盾の扱いはどんどんうまくなる。
ただし言わせてもらえば、以前私はホワイトラン近郊で、マッドクラブからの攻撃をひたすら盾で受け続けるという鍛錬をしたことがある。それと全く同じ感覚を味わっていた。
お前では相手にならん?
全くその通りなので、返す言葉もない。だが私を相手にするしかないのもまた、お宅の運命なのだ、アルドゥイン。
最後の一撃を喰らわせると同時に、盾のスキルがアップし、私自身もまた一回り大きくなった気がした。
本当に申し訳ない。こんな倒し方をしてしまって……。
世界を喰らわれては困るのだが、重ね重ねの失礼だけはお詫びしたい。
はい、もうおっしゃる通りです。
……いや、おもねっている場合ではない。奴を逃がしてはならないのだ。
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