地底とはいえ、天井は高く地面には道も敷設されている。ドゥーマー達にとっては、これが屋外になるのだろう。
アルフタンドの正面には、いくつかの小さな家が見える。民家だろうか。
早速お邪魔してみよう。
何となくカトリアの様子がおかしいが。……あたりに立ち込める光るキノコの胞子のせいで、私のお目の方がおかしくなったに違いない。
民家に入るとすぐ、耳障りな音が聞こえた。ずっと聞いていると頭痛になりそうだ。
この独特の音色は間違いない。ニルンルートだ。しかし色が変わっていた。こんなに赤いのは」地上では見たことがない。
民家の中はずいぶん荒れ果てていた。
ドゥーマーが姿を消して以来、ずっと放置されていた……というほど古くもない。
理由は間もなく分かった。少なくとも数百年前から、ここに誰かが住んでいたのだ。
白骨化した遺体には無数の矢が突き刺さっている。
ヴォルスタグは家探しする気満々だが、この死体の名前を見る限り、変な草や花くらいしか出てきそうもない。
リフトのアブルサ・サレシが心配していた錬金術の師匠の末路だ。
部屋から見つかった日記に、彼がここまで来た理由と、その後何が起きたかについて記されていた。
ブラックリーチを目指そうというのは、ドゥーマ学者と冒険者くらいだろうと決めつけていたが、珍しい植物があると分かれば、錬金術師だって行きたくなるらしい。
シンデリオンは一人でアルフタンドを攻略して、ここまで来たのだろうか。彼のニルンルートへの情熱はすさまじい。
しかし新種のニルンルート採集は、ここの住人に許してもらえなかったようだ。生かしても殺しても害のないような人物なのに、ファルメルもオートマトンもひどいものだ。
なんとなくかわいそうになったので、クリムゾン・ニルンルートの収集を引き継いでみよう。うまく集まれば、アブルサあたりに渡して彼の研究を続けてもらえるだろう。
……次回は、アブルサの日記を読んでレインボー・ニルンルートあたりでも探す羽目になるのかな。
ブラックリーチだが、これがまた暑いのか寒いのかがよく分からない。
マーキュリオとヴォルスタグは歯がガタガタならないよう、我慢するのが精いっぱいというが、私にはあたりに立ち込める湿気で暑いようにも感じる。地中深くにいるから、本来は暑いのだとは思うのだが。
遠くには、オレンジ色に輝く球体が見えた。太陽のかわりになるものを作ってぶら下げたのだろうか。あれも明るいのだろうが、光るキノコの方が明るくて、実際照明として役に立っているのかどうだか分からない。
現在では、ブラックリーチの住人はファルメルだけということになるのだろうか。連中が、関所らしい建物で道を見張っているのによく出くわした。
ファルメルとくればシャウラスであるが、こちらはキナレスの加護のおかげで私達を見逃してくれている。
ムザークの塔を探して歩き回る。道を尋ねる相手がいないのはつらいものだ。
道中、またしても不思議なものを見た。……というよりある程度見慣れたものだ。
川の向こうに、光の弾が飛び交っていたのだ。あれはウィスプだ。近づくとウィスプマザーが出てくるあれだ。ブラックリーチにもいるのか。
見るものすべてが初めてで奇怪なブラックリーチでは、地上で見慣れたものがあるとかえって不気味に思えてしまう。
ブラックリーチはどれだけの広さがあるのだろう。
胞子のせいで視界があまり効かないが、もうホワイトランからロリクステッドくらいの距離は歩いている気がする。
この川の向こうにも複雑な地形が広がっていた。右手の塔は、ブラックリーチの天井を貫いているようだ。
とりあえず、滝の下へ降りている遊歩道っぽい舗装路から探索してみるか。
歩道を降りると……。またしても見慣れたものが。
フロストトロールまでブラックリーチに普通にいるのか。
意外と豊かな自然環境に恵まれているらしい。そしてフロストトロールが生息できるとなると、気温もかなり寒いのだろう。
とりあえず、ファイアブレスを吐いて切り抜けるとしよう。
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