さて、アルフタンド探索に出発することにする。
私も先に入った探索隊のように、日記を書き残したほうがいいのだろうか。
4E201年降霜の月28日、私トカゲ率いる探索隊は、本日よりアルフタンドの最終調査に出発する。メンバーは、幽霊になったエセリウム研究者、マルカルスの傭兵、リフテンの傭兵の合計4名。我々の残す記録が後に続く勇敢なドゥーマー調査隊への有益な警告になることを期待する。
……などとな。
最初に、前回探索を中止した場所へと戻った。例の、解体現場である。
先に入った調査隊のメンバーは、ここですでに二名を残して全員遺体で発見された。いまだ発見されていない二人は、まだこの先にいるのか。それとも命からがら脱出できたのか。これからの調査で分かることだろう。
新しいエリアは、案の定ファルメル達の住処になっていた。
前回はかなり苦戦したが、今回は違う。
前衛二人、後衛二人の戦いがこうも楽になるとは。
キナレスの加護もありがたい。
これのおかげで、クモは私達の敵ではなくなった。ファルメルと共闘されると、地味に面倒なことになるのだ。
それにしてもこんな辺鄙な遺跡に、たびたび入ってくる人間がいるのだろうか。
ファルメルの罠を時々見かける。ドゥーマーの罠に倣って何となく設置してみただけなのか、それとも本当に、外敵に備えて取り付けたのか。
いずれにせよ、ドゥーマーの巧みに隠された罠と比べると稚拙極まりない。こんなものに引っかかる人間はいないだろう。
……幽霊は引っかかるようだな。
地下もだいぶ深くまで来た。
地下へ行くほど気温は高くなるものらしいが、ドゥーマーの遺跡はそのところもよく考えて作っているのだろうか。
地熱を使った蒸気機関で施設を動かしているらしい。
開けた場所へ出た。今までと雰囲気が全く違う。
ここはいったいどういう場所なのだろうか。
まるで円形闘技場のような広場に、センチュリオンが見える。片側の一体はすでに破壊されているようだが。なぜ壊れた。
広場に足を踏み入れると同時に、無傷だった一体が襲い掛かってきた。
無表情の金属製の顔がこちらを向き、黒々とした口が開いて熱い蒸気を吹きかけてくる。ずっとお面みたいに動かない顔だと思っていたので、口が動いたのには驚いた。意外と細かく作られている。
後衛の二人の支援もあり、センチュリオンはすぐさまスクラップとなった。
この二体、まるで門番のように左右に配置されていた。
とすると、この先の建物には何か重要なものがあるのだろうか。
階段を登った先の建物に入る。不思議な台が中央にあり、そして……。
以外にも先客がいた。私達より先に入った調査隊である。あの二人まだ生きていたのか。
しかし様子がどうもおかしい。どうやらここまで来て、まだ手柄争いをしているようだ。
カトリアがため息をついたように聞こえた。彼女もそれなりに身に覚えがあるようだ。ドゥーマー研究の道は、茨の道のように過酷らしい。
出来れば二人の不毛な争いを止めてやりたいところではあるが……。
比較的冷静でいたウマナに加勢してみたものの、スラが倒れるや否や彼女は私達も始末しようと襲い掛かってきた。結局彼女も、手柄を他の者に奪われたくなかったのか。
これでスラ調査隊は全滅だ。ドゥーマー学会にでも報告しておいた方がいいのだろうか。
建物の中を探索したが、特にこれといったものは見つからない。
ドゥーマ製の剣を見つけたので、ヴォルスタグに渡しておこう。これならば、オートマトンを切っても刃こぼれしないはずだ。
中央の不思議な台だが、セプティマスから渡された球体を台座にはめ込むと、下へ降りる階段が出現した。
重要なものは、この下にあるらしい。
そして、あのセンチュリオン二体が守っていた物が判明した。
ブラックリーチだ。光るキノコと光る鉱石に照らし出された美しい世界が、アルフタンドの地下に広がっていた。
ようやく星霜の書探索の出発点に到達したというわけだ。
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