夜明け前から下山。
日が昇る頃、最後の標章を詣でてカイネの加護を得た。彼女の加護にはどれほど救われているか分からない。ブラックリーチでも加護が続くことを祈ろう。
さて、神の加護を得たはいいが、私の財布は以前として空である。
イヴァルステッドに戻って薪割りで少し稼ごうと思ったものの、すでに製材所の仕事が始まったようだな。
仕方がないから、このまま出発するか。できればウィンドヘルムから馬車に乗ってドーンスターへ行き、そこからアルフタンドを目指そうと思っていたのだが。馬車賃は別のところで稼ぐか。
さあ、ウィンドヘルムへ出立だ。
イヴァルステッドからイーストマーチへ下る森は随分歩き慣れているはずの場所だ。
しかし午後も早く、森の中に見慣れない小道とその先に建つ民家が目に入った。
こんな人里離れた場所に、一体誰が住んでいるのだろう。
興味を惹かれて訪ねると、民家に近づくにつれ奇妙な耳鳴りがしてくる。
家の隣に広がる畑に、その原因があった。随分たくさんの二ルンルートが生えているではないか。
畑まで行くと、その耳鳴りは最高潮に達する。どうしてこの草は、脳内から直接響くような奇妙な音を立てるのだろう。一本だけならまだしも、こう多いと気が狂いそうだ。
畑には民家の主人らしいダークエルフの女性がいた。このうるさい二ルンルートは、彼女が育てているらしい。しかし、二ルンルートは育てられるものなのか。水辺だけに生える、貴重な草と聞いてはいるが。
アブルサ・サレシと名乗った女性は、育てられるのは自分一人くらいだろうと胸を張った。
そして自分がそれをできるのも、立派な師匠がいたからだと話した。その人は二ルンルート研究の第一人者らしい。
しかし、その師匠とはもう何年も会っていないのだとか。文通とかしていなかったのだろうか。もっともこういう研究者というものは、自分の研究ばかりに没頭して、他の人間と連絡を取り続けることなど忘れがちなのかもしれない。
アブルサは二ルンルートの肥料にするジャズベイブドウを探していたので、手に入ったら持っていく約束をし、別れた。
二ルンルート畑。凄まじいうるささだった。畑を作るのはいいが、自宅はもう少し別の場所に建てたほうがよかったのでは。あの音と光では、夜も寝られないだろうに。
山を降りて火山地帯を下に望む辺りで、また奇妙なものを見つける。
男が一人、散らかった荷物の側で座り込んでいた。
どうやら彼は旅の商人で、ちょうど山賊に出会した後だったらしい。
近くに仲間がいるらしいので、そこまで護衛して欲しいのだとか。近くに仲間がいるのなら、なぜ助けに来なかったのか少々疑問ではある。
そしてこの商人、私の返事を待たずに立ち上がり、颯爽と走り出してしまった。まだ助けるともなんとも言っていないぞ。
山賊に襲われて負傷中だったはずなのに、足取りは非常に軽い。仮病ならぬ仮怪我商人が案内した先には、いくつかの人影があった。
彼の仲間が待つという野営地だが、鹿を追いかけて行った狩人2名が彼の仲間と交戦中に見えなくもないのだが……。「ばあさんの財布みたいにビリビリにする」とか叫んでいるように聞こえるぞ。あのフレーズ、山賊達は大好きだったはずだ。
そろそろ彼の茶番に付き合うのも飽きてきた。
お礼をするという商人だが、私も飽きてきたので突然殴りかかってもいいだろうか。
こちらはこれからブラックリーチで大冒険をしなければならないというのに、ずいぶんつまらない芝居で時間を取ってくれたものだ。
さっさと片付けて、昼食にするとしよう。
普段からドゥーマーのオートマトンやファルメルを相手にしていた幽霊学者、マルカルスとリフテンの傭兵達。
道端でへたくそな芝居を打って強盗を働いているような連中が勝てるメンツではない。
私達に声を掛けたのが運の尽きだったようだな。
連中の野営地は、抜群の景色だった。
ここからイーストマーチの火山地帯と、そこから山へ登っていく街道がよく見える。
火もあることだし、食事をするのに最高の場所だ。
ベンチに腰掛けて食事をしていたら、薪割り台が見えた……。
財布が空っぽであることだし、ここで少し薪を割って馬車賃でも稼ぐとしよう。
美しい景色を眺めながら薪割りもできるとは、素晴らしい場所だ。
一人薪を割ること小一時間。
すまないが、この薪を誰か半分持ってほしい。
ヴォルスタグに白羽の矢が立ったのは言うまでもない。
野盗達の野営地から山道を下り、ダークウォーター・クロッシングへ。
デルキーサスは元気にしているだろうか。
そういえば、リフテンの鉱山街で、鉱山労働者の女性から手紙を預かっていた気がする。
引き受けたのがいつだったかもしれない手紙。しかし受け取った彼女の父親は喜んだ。
てっきりお礼がもらえるとばかりに思っていたが、喜ぶ父親から渡されたのは、またしても手紙の束だった。
仕方がないから届けてやるか。私は配達人ではないのだがな……。
さて、ダークウォータ・クロッシングからそのまま街道を進んでウィンドヘルムを目指してもいいのだが、私はアルゴニアンである。
川を泳いで進めるなら。そちらの道を取りたいものだ。歩くより泳ぐ方が好きなのだ。
幽霊のカトリアはともかく、傭兵達は渡渉に不満があるようだ。
まあ目の前に流れている川は激流で、足もつかない深さだから無理もないか。
では私一人で行くとしよう。マーキュリオとヴォルスタグは渡りやすい場所まで下って追いついてくればいい。
日も暮れるころ、私とカトリアは火山地帯の温泉地にたどり着いた。
今夜はここで休むとしよう。
スカイリムの冷たい川を泳いで渡った後の温泉は格別である。
凍えた体がお湯で溶けていくのを感じつつ、本日の旅を終えた。
明日はウィンドヘルムで馬車を借りよう。
前へ |
次へ
1. 無題
個人的には、ドゥーマーの遺跡で炎の罠を利用してスキーヴァーを焼いてる山賊たちと並んで好きな山賊イベントです。
一度迷子になってテルラヴさんに話しかけずに野営地にたどり着いたときはモヒカンでド派手なフェイスペイントをした世紀末っぽい「衛兵」という名の方に遭遇してさすがに吹き出しましたw
Re:無題
スカイリムの山賊達はアジトの細かな飾りつけを見るに、ちゃんとトイレが設置されていたり、炎の罠を料理に使ってみたりと、町に暮らすNPC以上に生き生きとした生活の描写がありますよね。
街道を歩いているとまれに出会う、帝国兵の変装をして通行料を求めてくる山賊達も愛嬌があって好きですw