さて、ヌチュアンド・ゼルに侵入した。ここから先は未発掘ということか。
いましも壁を這うパイプの一つからドワーフスフィアでも出てくるかと身構えていたが、違った。
短い通路を抜けるとすぐにかなり広い洞窟の空間に出る。そこに林立するいくつもの石の塔には、ファルメルの姿。よくもこれで今までマルカルスが無事ですんでいたものだ。もしかしたらニムヒが、こいつらがマルカルスの町に出てくるのを防いでいたかもしれないぞ。
見つけてしまったものは仕方がない。手当たり次第に排除していくこととする。
ドゥーマー遺跡にはまずどこにでもいる連中だな。
対して知能のあるようには見えないが、彼らなりに服装にはこだわりがあるらしい。
このファルメルは女性のようだが、なかなか大胆な衣装だ。
うろこ無しの人間達は、アルゴニアンの侍女でも、毛だらけの猫娘でもいけるらしいから、これもいけたりするんだろうか。
探索は続く。先に入った研究者ご一行はいまだ発見に至らず。見つからないは、遺跡内部を元気に探検中ということだからだろうか。
ヌチュアンド・ゼルは、細い塔の林立する竪穴洞窟周辺を囲う構造になっているらしい。洞窟の天井部には光を放つ鉱石が埋もれていて、まるで星空のようだ。あの石はなぜ光っているのだろうか。
ドゥーマー遺跡で見られる洞窟の風景も独特だが、通路に立ち込める霧も他の遺跡にはないものだ。
この湿り気と温かさは、アルゴニアンにとっても心地いい。ノルドのヴォルスタグには暑いくらいかもしれない。
通路の先に突如として、研究者ご一行の末路第一号が現れる。遅かったのか。少なくとも彼に関していえば。
近くには護衛の遺体も倒れていた。
ストロムの研究ノート。
彼は枯れ木が植えられたフロアに倒れていたのだが、あの木を調べていたようだ。ホワイトランから来たのであれば、ずいぶん広い範囲で交流があったということか。当時のノルドからの贈り物か。
ドゥーマー遺跡。この枯れ木一本から、専門的な目では様々な情報が読み取れるらしい。なかなかに興味深い。
そして同じく好奇心満々のノルド傭兵もここに一人。私達は壊す専門だから、上手に分解できないのが悲しいところだ。
ヴォルスタグはやはりドゥーマ遺跡の探索に慣れていた。戦士である彼にとって、剣の刃こぼれは死活問題だ。ただ同じセリフを、後ろからくるウィザードからも聞いた気がする。
アルフタンド探索の時は、ヴォルスタグにメイス系武器でも与えた方がいいだろうか。
遺跡をしばらく進むが、戦闘タイプのオートマトンが一切姿を見せないのに気が付いた。施設のメンテナンスをしているらしいスパイダー型の機械はうろうろしているのだが。
ファルメルがこうものびのび生活できているのも、それのせいだろうか。
こういう壁の穴からは、ドワーフスフィアが出てくるものなのだが……。しばらく待ってもノックしてみても、何も出てこなかった。
大空洞の塔を降りきると、下には水が溜まっていた。地底湖というほど広くはないが、深さはかなりありそうだ。
もちろん私は嬉々として水の中に飛び込んだが、後に続く傭兵達は気が進まないらしい。できる限り体を濡らさないよう別路を探していた。しかし結局最後は二人とも水に飛び込んだ。
未発掘、あるいは発掘途上の遺跡はわくわくするものだ。珍しいものを目にするたび、これは何かと尋ねる専門家がそばにいてほしくなる。
マーキュリオの言う通り、ここにあるものをいくつか持って帰れば、カルセルモ博士から説明を受けられるかもしれない。あるいは、貴重な遺物を勝手に動かすなと叱られるかもしれないな。
またしても研究者の遺体が……。
遺跡の探索が進むにつれて、救出の希望がしぼんでいく。やはりファルメルに襲われたらしい。こんな見晴らしのいいところでキャンプなどするから……。
すぐ奥にセンチュリオンが見える。あれは動くのだろうか。いや、動けるならとうの昔にファルメルを排除していたはずだ。そしてここで死んでいる研究者達も、鋭い刃物で切り刻まれた体ではなく、重たい金属の拳でぺしゃんこになった姿で見つかったはずだ。
研究者クラグの日誌。
これによると、ここでキャンプをしたのは衛兵の提案だったようだ。罠のルーンを仕掛けていたらしいが、私達がここに来たときはもう残っていなかった。多少のファルメルには効果があったのかもしれないが、襲撃を押し返せるほどのものではなかったようだ。
そして気になるのは、武器庫で調査をしようとしていた連中だ。なぜ分かれて進んだ。今度は武器庫でエルジとやらの死体を発見することになるのだろうか。
武器庫へ入ると、たくさんのオートマトンの影が。
思わず構えたが、影は彫像のように動かない。保管されているだけで、動力は取り外されているのかもしれない。
そして武器庫最奥の宝箱に手を伸ばしたまま絶命した男が一人。傍らには日誌もあるが、それを読まなくても彼が誰だか分かる。
エルジよ、盛大にしくじったな。鍵開けをしている最中に、ファルメルに背後から襲われたか。
飾られているセンチュリオンがいつ動くかと思うと怖いが、慎重に近づいてエルジの手元から彼の日誌を奪う。
宝箱には手をつけまい。何があったかは知らないが、盗賊の真似をしている間にファルメルに背後を取られる愚は、繰り返さないぞ。
エルジは研究者ではなく、トレジャーハンターだったのかもしれない。遺跡を荒らされたくない研究者達からすれば目の敵だが、鍵開けや罠外しには役に立つ。
欲をかいて一人ここに残り、自分の城を買う夢に溺れたか。
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