さて、マルカルスへ向かおう。
懐が温かいおかげで、馬車が使える。素晴らしいことだ。
この季節、ウィンドヘルムにしては珍しい快晴に、御者もなかなかのご機嫌だ。
私としても、ゴーストシーの凍える海風から離れて比較的温かな山の中へ移動できるのはありがたい。当然インペリアルであるマーキュリオもだ。彼は朝からウィンドヘルムのノルドの服装についてあれこれ言っていた。少なくともこの寒さで半袖を着れるノルドという連中は、やっぱりおかしいとのことだ。
マルカルスまでの馬車旅は丸一日かかる。ウィンドヘルムを早朝に発っても、夜中近くに到着なのだ。
ドゥーマーの遺跡をそのまま町に利用した都市だが、依然見た時とはまた印象が違って見える。なにせあのアルフタンドを見てきた後だ。ドゥーマーが姿を消して何千年もたっているのにいまだ動き続けていた蒸気機関やオートマトン。このマルカルスという都市の土台にされたドゥーマーの都市が、再び目覚めて人々に襲い掛かることはないのだろうか。
とはいえ、地中にあったアルフタンドよりは地上に築かれたマルカルスの都市は幾分明るい雰囲気を感じる。蒸気の通ったパイプや、常に動き続けるポンプやピストンがほとんど見えないせいだろうか。
まあ、別の意味で闇のある町ではあるが。
以前ともに冒険したコスナッチは、今夜も宿の酒場で飲んだくれていた。フォースウォーンのせいで、相変わらず荷運びの仕事が暇になっているのだという。
暇をしているなら、ドゥーマー遺跡探検に連れて行ってやらないこともないが。
コスナッチ曰く、ドゥーマー遺跡に潜るくらいなら、宿で仕事もなく飲んだくれている方がましだという。
仕方がないから彼には酒をおごって、宿の傭兵を紹介してもらうことにした。適任そうな男がいるらしい。
コスナッチは、宿の隅で壁にもたれていたノルドの戦士を指さした。こちらが事情を話すと、彼は二つ返事で傭兵の仕事を引き受けてくれた。
そもそもマルカルスでは、こういったドゥーマー遺跡探索の依頼が多いらしい。そして彼もそれを見込んで宿に張り込み、護衛を探していそうなドゥーマー研究者などを待っていたそうだ。
どうやら彼はドゥーマーのオートマトンに、興味を持っているらしい。あれがどうやって動いているのか知りたいのだそうだ。
少々変わり者のようだが、オートマトンの処理に慣れていそうなので頼りにはなりそうだ。
さて、これで仲間はそろった。あとはマルカルスに住む、ドゥーマ研究の第一人者とかいう人物を訪ねて情報を集めることにしよう。今日はもう遅いから、明日の朝いちばんに訪ねてみようか。彼がアルフタンドに興味を持っているのならば、我々の冒険にいくばくかの支援を頼んでみるのもいいだろう。
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