リフテンの宿でウィザードの傭兵を雇った。
懐がさみしすぎるのと、雇ったウィザードの実力のほどが知りたいので、これまでの冒険で安請け合いした頼みごとのいくつかをこなしながら、ウィンターホールドを目指すことにする。
まずは、リフト地方最北部あたりにあるアンシルヴァンドという場所を目指そう。カイネスグローブ在住のロッジとかいう男が、ご先祖様が小便がてらに入ったそこの洞窟に盾を置き忘れたと話していたのだ。
ところがである。
まだ日も昇らぬ早朝にリフテンの市門を出るや否や、ドラゴンが現れてしまった。どうやらアンシルヴァンドに行かずとも、雇った傭兵の実力が知れそうだ。
あたりは突如現れたドラゴンに大わらわとなっていた。リフテン衛兵はもちろん、町の外で屋台を広げようとしていたカジートキャラバンの面々も一斉にドラゴン退治に走る。誰一人として、「ドラゴン怖い」と逃げる者などいない。
そうなると、ドラゴンボーンたる私が木の陰に隠れて見ているだけなのも少々気が引けてきた。
仕方なく木の陰から出ると、ドラゴンから炎の洗礼を受ける。仕方ないので、こちらもフロストブレスの挨拶をお返しする。
相手がただのドラゴンでよかった。以前のようなブラッドドラゴンだったら、私はそのまま燃え尽きていたかもしれない。
マーキュリオの魔法も衛兵の矢同様、的確にドラゴンをとらえ続けていた。
勇敢すぎる人間達の猛攻に耐えられず、ドラゴンはあっけなく墜落する。
竜戦争時代の人間もそれなりに勇敢だったのだろうが、現代の人間も負けず劣らず勇敢らしい。
倒したドラゴンの骨と鱗を回収。腹の中にあった金貨はドラゴン退治戦利品として懐に収めた。
宝石も胃袋から見つかったので懐に入れておく。ドラゴンの骨と一緒に、グレイビアードに奉納することにしよう。
リフテンを出発するころには、すっかり日が昇っていた。アンシルヴァンドまで遠出するから、早くに宿を出たというのに。ドラゴンめ。
マーキュリオは出発早々派手にいい仕事ができたせいか、ずいぶん機嫌がいい。魔術を極めし彼には、ドラゴン退治などお手の物なのだというのが今朝分かったかららしい。
彼は、自分が雇われた理由を知りたがった。
私も誰かに雇われているのかとか、どんな仕事を受けているんだとか。
傭兵が傭兵を雇うのは、珍しいことではない。依頼された仕事を確実にこなすため、報酬の範囲内で仲間を募るというのは堅実な判断だからだ。
もっとも私の場合は、魔法大学に一人で行くのは心もとないから、ウィザードについてきてほしいだけだ。大学の教授が星霜の書についてやたら難しい話をしてきたら、私には理解する自信がない。
解説員が欲しかっただけの私に、マーキュリオは少し拍子抜けしたようだった。しかも誰に頼まれるでもなく星霜の書を探しているなんていうのは、少々冗談めいているのだそうだ。それでも万一本気でそう思っているのであれば、大学ではなく、シロディールの白金の塔にでも行けという。
白金の塔には、星霜の書の図書館があるらしい。
しかし私が探しているのは、竜戦争時代、世界のノド山頂でアルドゥインを時間の彼方へ飛ばした書だ。
スカイリムで用いられたなら、まだスカイリムにあるかもしれない。大学で情報を得られなければ白金の塔まで遠出するのもいいだろう。シロディールのブルーマへ通じるペイル峠がまだ封鎖されたままなら、ソリチュードから船で行くしかないのだろうか。
しゃべりながら歩いているうちに、アンシルヴァンドまでたどり着く。時刻は昼食にいいころだが、先に盾探しを済ませてしまうことにしよう。
ロッジの話だと、ご先祖様は洞窟で盾を忘れたとのことだが、いざ入ってみるとどう見てもノルド遺跡だ。入り口部分は盗掘者によって穴が開けられている。
外に野生のウィザードがいたので、盗掘の犯人は……死霊術師の可能性が濃厚だな。
少し奥に入ってみたが、盗掘で開けられたらしい穴の雰囲気が続いている。遺跡の壁を探して掘り進んだらしい。
作業員として駆り出されたと思しきドラウグルがうろうろしていた。
ここは連携プレイといこう。
ウィザードは打たれ弱いので、積極的に私が前に出て敵の注意を引き、マーキュリオに後ろから魔法で援護してもらう。
敵はあっさり片付いた。味方がいるというのは、やはり心強い。ステンヴァールと組んだ時とはまた違った楽しさがあるな。
遠隔攻撃なら、私にもシャウトがある。
油まみれの地面でぼーっとしている敵に、ファイアブレスで引火させるのは何とも愉快だ。
それにしてもマーキュリオといい、この見習い死霊術師といい、自分の実力によらず大口をたたくのはウィザードの習性なのか。
この後あっという間にマジカの尽きた魔術師が、ナイフ一本で私に殴りかかってきたことは言うまでもない。
ロッジのご先祖様の盾は、行けども行けども見当たらない。
ようやく遺跡内部らしき場所に出ると、奇妙な声が聞こえてきた。
ロッジのご先祖様、用足しで洞窟に入ったというより、亡霊に驚き、漏らして盾を放り出したとかじゃないだろうか。
いずれにせよ、盾探しは一筋縄ではいかなくなったようだ。
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