
私達の背後でエズバーンの話はまだ続いているのだが、デルフィンはすでにアジトの方へと興味を移していた。
アルドゥインの壁からは必要な情報を得たし、シャウトの探索は私がグレイビアードを訪ねるしかないしで、彼女自身がやるべきことにすぐさま取り掛かりたいらしい。
時間を無駄にしない姿勢はさすがだ。

仕方がない。エズバーンの講義には、私一人で立ち合おうか。
壁中央の彫刻の意味が分かったから、右端はどうでもいいのが正直なところだ。未来を予言している部分だが、未来など現在の立ち振る舞いでいくらでも変わる蜃気楼のようなものだ。

エズバーンは彫刻にあるブレイズ達の姿からアルドゥインだけでなく、ブレイズ達の任務の終了も読み取ろうとしている。
口には出せないが私個人としては、右端の彫刻は予言というより、ブレイズ達の願望を描いただけのものにも見える。

エズバーンは時折、デルフィンの反応を気にしている。もちろんデルフィンはあっちの部屋を覗き、こっちの部屋を覗きで聞いていない。
あれだ。彼女はきっと、おとなしく座って先生の話を聞いていられない子供だったに違いない。

それにしても、最後のドラゴンボーンとはどういうことだろうか。
尋ねてみると、エズバーンは私の物分かりの悪さに少々がっかりした様子だ。生徒一人は全然話を聞かないし、もう一人は話が右から左に抜けるともなれば、エズバーン先生もさぞかし空しかろう。

壁が描く未来と最後のドラゴンボーンという表現に懐疑的な私へ、エズバーンは「ドラゴンボーンのお告げ」を唱えた。
世界の8番目の地方が無秩序となった時
真鍮の塔が歩き、世界が再構築される時
3回の祝福が失敗に終わり、紅の塔が揺れ動く時
ドラゴンボーンの支配者が失脚し、白い塔が崩れる時
雪の塔が崩れ落ち、主も存在せず血が流れる時
世界を喰らう者は目を覚まし、運命は最後のドラゴンボーンへと向かう

「ドラゴンボーンの支配者が失脚し、白い塔が崩れる時」という部分は、オブリビオンの動乱についての表現らしい。
壁にはしっかりとオブリビオンゲートが描かれていた。確かに、この部分の予言は当たっていたが……。

「世界を喰らう者は目を覚まし、運命は最後のドラゴンボーンへと向かう」
お告げの結びの言葉。
エズバーンが私を最後のドラゴンボーンというのは、このお告げが根拠となっているらしい。
誰が最後になるかなんぞ、世界が終わってみるまで分からないと思うのだが。

いずれにせよ、アルドゥインをどうにかできるのはドラゴンボーンくらいしか候補がない。
最強の戦士や絶大な魔力のウィザードであればアルドゥインを倒せるかもしれないが、それは一時的なこと。ドラゴンは不死だ。いくらでも復活できる。
ドラゴンの復活を止めるには、ドラゴンの魂を吸わないといけないのだ。それができるのがドラゴンボーンだ。
さらには、ドラゴンを空から引きずり下ろせるシャウトを使えるのも、この時代においてはドラゴンボーンくらいしかいない。この世界、猫人間やトカゲ人間はいても鳥人間がいないから、ドラゴンと空中戦でやりあうなど無理なのだ。

どうも二人からは想像以上の期待をかけられているようだ。
まあいいか。私が最後のドラゴンボーンかどうかは、全てが終わってみれば分かることだ。
あの予言の壁のように事が進むか、見てやるとしよう。こちらは記憶喪失のまま、一向に過去が思い出せないから、暇を持て余しているのは確かだ。

そうと決まれば、今日はすでに時間も遅い。
ブレイズのアジトで一晩休んで、明日はハイフロスガーへ向けて出発しよう。途中、ロリクステッドで宿に預けた竜の骨を回収し、ついでにエリクを世界のノド登山に連れて行ってやるのもいいか。
それにしても、ずいぶん殺風景なアジトだな。ここは武器庫か。

そしてこちらの部屋が、居住スペースになるらしい。ここもがらんとしているな。本当に、寝て食うだけの場所といった感じだ。
私が出かけている間、デルフィンにはここの内装を宿屋みたいに居心地のいいものにしてほしいのだが。
無理かな。元宿屋の女将でも、根は完全な戦士だからな……。
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