本日は快晴なり。つまり、薪割り日和ということだ。
ホワイトランの空き家を手に入れるには、5,000ゴールド入り用になる。そして現在の持ち合わせは1,093ゴールド。
ホワイトラン従士になってからずいぶんあちこちを旅して、ドラゴンや山賊を退治してきたと思うのだが、それにしては驚くほど金が貯まっていない。
今後同じように旅していても所持品は大して増えないだろうという絶望的観測の元、結局地道に働くことにしたのだ。
とりあえず今日一日薪割りをして、4,000ゴールド工面できればいい。少々足りないようなことになっても、イリアの母親が使っていた杖を、ファレンガー辺りに買い取ってもらえば十分だろう。
聞けばレイロフもまだリバーウッドに居座っていて、義理の兄弟であるホッドの製材所で手伝いをしているらしい。ウルフリックに顔を合わせ辛い事情でもあるのだろうか。
ともあれ、製材所での手伝いはヘルゲンを逃げ出して以来だ。そこはかとなく懐かしさも感じる。
イリアにも薪割りを手伝ってもらうことにした。私が家を買ったらそこにしばらく住んでもらうつもりなので、家賃の前払いという名目だ。
午前中は朝7時から薪割りを始めて、ひたすら斧をふるい続けた。夕方までにどれだけの薪が稼げるかと夢見て。
昼はレイロフやファエンダルと共に切り株で風景を楽しみながら昼食をとる。エール一杯と新鮮なリンゴひとつだ。
こうしていると、傭兵などやめて普通の村人として暮らすのも悪くない気がしてくる。ここにいればそう頻繁にドラゴンの炎でやけどすることもなく、ドラウグルに追いかけ回されることもないのだ。私のしっぽをベルトにしたがる山賊も衛兵たちが撃退してくれる。
昼食が終わると、すぐに薪割りを再開した。
平和だ。平和だが、そろそろ飽きが来た。どうも私は根っからの冒険者なのかもしれない。
夕方6時。
イリアの薪割り成果を尋ねてみた。152本とは、またずいぶん頑張ったようだ。彼女も新しい住処を早く見てみたいそうだ。
私の方は196本だった。ところがこの成果をホッドに届けても、千ゴールドに満たなかった。
何ということだ。残業決定だ。しかもこのペースだと、徹夜必須ではないか。
だめだ。私にはまじめに働いて金を稼ぐ根気はなさそうだ。
しかし、金を確実に稼ぐ方法は薪割り以外にない。
結局私は夜を徹して薪割りを続けることにした。
夜8時の夕食には、さすがにイリアだけは解放してやった。
宿ではすでに村人たちがデルフィンの姿が見えないのを噂していた。彼らはオーグナーがデルフィンに捨てられたのではと話していたが、当のオーグナーが何も語らないので憶測にとどまっている。オーグナーもデルフィンに別れを告げただけで彼女がどこに行くつもりかなど聞かなかったし、その方がいいことを知っていたのだ。デルフィンの失踪事件は、このまま迷宮入りすることだろう。
夕食の席、ルーカンが黄金の爪を取り戻したことについて改めて礼を言いに来た。
あれが戻って以来、景気が前より良くなったらしい。
私の懐は相変わらず不景気なままだ。今夜は夜通し薪割りの音が村中に響き渡ると思うが、時計の秒針の音だと思って聞き流してくれるとありがたい。
それにしても、今日は本当に薪割り一色の日だった。
明日も丸一日、薪割りでつぶれないことを祈ろう。
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