酒場にどこかで見たことのある人物。
確かサルモール大使館でスパイ活動の報告をしていた人間だ。先回りされたのだろうか。
まあこちらを気にしているようでもなし。私の顔も彼は知るまい。
サルモールのスパイが酒場にいることで、ますます確信は深まった。やはりエズバーンはここだな。
しかし酒場の主に尋ねてみるも、そっけない返事だ。
こういう場所での礼儀というものにも、私は慣れてきた。いくらかの金を出すと主はあっさりと口を割る。……ということはサルモールも案外簡単に情報を聞き出せる、あるいは聞き出せたのではないだろうか。
不安を感じた私がちらりと客席に目をやると、先ほどの人間がおもむろに立ち上がり酒場から出ていくところだ。
これはまずいのだろうか。ひとまず引き留めた方がよさそうだ。
男はそそくさとラグド・フラゴンの扉の向こうへ消えた。
慌てた私が扉をくぐると男の声がする。エルフらしき尊大な口調の声も。どうやらあのスパイ、エズバーンではなく私自身に標的を絞って待ち伏せしていたようだ。
ばれたからにはここから生きて出すわけにはいかない。向こうもそのつもりだろう。
男の案内で現れたサルモールの高官に、出合い頭の一発をお見舞いし、戦闘開始だ。敵はエルフ三人と先ほどのスパイだ。
エルフ達の魔法には毎度手を焼かされる。幸いなのは大使館で暴れたときのように、一度に大量の敵を相手にしなくて済むことだ。
戦いが終わって死体を確認すると、あのスパイの姿がない。誰も逃がさなかったはずだから、酒場の方へ後戻りしたようだ。
酒場に戻って、最後の仕上げだ。
スパイの懐を探ると、こんな手紙が出てきた。やはり私自身も標的になっていたようだ。
手紙の送り主は、リフテンの市場で私をつけ回していたあのカジートだろう。手が早いものだ。
さて、ラットウェイの深部へ降りるとするか。
この死体はここに置いて行っていいかな。酒場の用心棒も、見慣れた光景なのか一切反応がない。酒場で暴れて衛兵沙汰にならないのは助かるが、いやはや、ここはひどい場所だ。エズバーンを見つけたら、さっさと娑婆に出るとしよう。
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1. 無題
まさか殺さなければ、ここにも出るとはw
Re:無題