パボの家で一晩の宿を借りた翌日。
戸口を出るや否や、吸血鬼らのご来訪を受けてしまった。
朝っぱらから元気なことだ。私のように寝起きの悪い者には、突然の運動はなかなかつらい。
しかし彼も日の光は苦手だろうに。なぜ夜の間に襲って来なかったのか。
とんだ目覚めの運動だったが、きりりと冷えた回復薬を一気飲みしつつやり過ごす。考えによっては、健康的な一日のはじまりだろう。
天気は快晴。暖かな日差しとマルカルスへの朝の散歩を、存分に楽しむとしよう。
私が差し出したディベラ像を見るなり、リスベットは手放しに喜んだ。あれほど「一人では無理だ」と私を見くびっていたというのに。
これも、お宅の運搬夫が手伝ってくれたおかげだ。だが一番の功労者は、あのヤギだな。
報酬は500G。先の約束通り、コスナッチとは山分けした。
ドルアダッチ要塞までの水先案内賃として、ハチミツ酒をもう一本つけてやった。
仕事上がりの一杯は格別だ。
ワインと蒸したカニの脚、リンゴで遅めの朝食をとる。
ほどなくして、私は城塞都市の門を出た。
今日はオールド・フロルダンという宿で一泊し、翌日にロリクステッド、明後日にはリバーウッドへたどり着くつもりだ。
ところが、早くも今日一日の予定は狂わされてしまった。
マルカルスの橋の上を、一匹のドラゴンが舞っている。
ドラゴンも、さすがに岩山の狭間に建つマルカルスには近づきにくいようだ。となると、郭外の集落や施設が自然と奴の標的になる。
被害が出る前に食い止めねば。
マルカルスの衛兵達が、臆することなく立ち向かっていく。
私が駆けつけるころには、衛兵どころか厩の馬までもがドラゴンに戦いを挑んでいた。
スカイリムは、英雄の心を持つ者であふれているようだ。ドラゴンの鋭い牙に怯みがちの私の、なんと臆病なことか。
己のふがいなさにほぞをかみながら、ドラゴンに揺るぎなき力を当てる。怯んだすきに拳を叩き込み、私はかろうじてドラゴンボーンの面目を保つことに成功した。成功したかに見えた。
燃える灰とともにドラゴンソウルが解き放たれ、私に向かって吸い込まれようというとき、共に戦っていた衛兵が、おもむろに声をかけた。
「お前はスカイリムとその民に罪を犯した」
私のシャウトが、勇猛果敢な衛兵か馬か、あるいはその両方を巻き込んでいたらしい。
拘束され連行され、牢で所持品をあらためられ、最後に「危険なので人のいるところでシャウトは控えるように」と厳重注意を受けた後、私はようやく解放された。
ドラゴンボーンとは、いったいなんなのだろう……。
その後のことはあまり覚えていない。
気がつけば、マルカルスから遠く離れた橋を、とぼとぼと渡っていた。
時刻は日没前。オールド・フロルダンはもうすぐそこだ。
石畳の街道をはずれ山際の細道を少し登ると、ひなびた一軒の宿が見えてくる。
オールド・フロルダンの歴史は古いと聞くが、あまりに古くなりすぎて、旅人にまで忘れ去られたと見える。
宿の表には使用人と思しき男が一人、延々と薪を割り続けているだけだった。他には犬の一匹も姿が見えない。
静まりかえった宿は、暖炉の炎だけが元気よくはぜていた。
私を出迎えたのは、まだ年端もいかない少年一人。ところがこの少年、なかなかどうして一筋縄ではいかない。
十数年来宿の主人をしているような堂に入った客のあしらい。私のような強面の傭兵を前にしても一歩もひるまない。
スカイリムの人々は、幼いころから恐れを知らないようだ。
私が呑気に感心しているうちに、宿泊の手続きも夕食のメニューも、少年がそつなく整えてくれた。
歩き通しの一日の最後、面倒見がよく手際もいい宿の主人に身を任せられるほど幸運なことはない。ベッドのシーツもきちんと交換してくれたようだ。脚が腐りかけの椅子と、汗臭さの残る毛布しかなかったマルカルスの宿とは雲泥の差だ。あの宿も一応息子が頑張っていたのだが、こちらの少年が何枚も上手だ。
どう教育したら、あんな立派な子供になるのか。本来の宿の主人である彼の母親に話を聞くと、父親が兵士として家から出て行ったのが関係しているようだ。
さらに彼女は、宿にまつわる歴史も話してくれた。ここはかのタイバー・セプティムが泊まった宿でもあるという。
私の部屋は、タイバー・セプティムが使ったと伝えられる部屋だった。少々疑いたくなるような質素さだが。
アルゴニアンの私には、いまいちピンとこない。インペリアルやノルドあたりならさぞかし感激するのだろうか。どうでもいいな。
さて、明日も早い。早々に床につくとしよう。
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1. お久しぶりの…!!
衛兵が戦いに参戦してくると厄介ですね…
ファス程度ならまだよろけるくらいなのですが、ロダまで行っちゃうと吹っ飛んで崖から落っこちて死んだりして…それが罪になったりするんでしょうかね。
グレイビアードの爺ちゃん達が人里離れた場所で修業したがるのも分かります。
いよいよ来月スカイリムのリマスター版が出るそうですね!
PCはMODが適応されないとは聞いてないので「このままスルーっと移行できるかな…」なんて甘い考えでいるんですが(笑)
最近FO4もやっているのですがあの綺麗な環境でスカイリムが出来ると思うとワクワクします!
個人的な希望としてはせっかくリマスター版が出るんだから新しいDLCか要素も入れてほしいな…なんて思ってはいますが。
Re:お久しぶりの…!!
内戦クエストで衛兵を味方の兵士達にすげ替えていたら、ちょっとくらい誤爆しても許してくれるようにはなるんですが。衛兵達にとって、プレイヤーは所詮どこの馬の骨か分からない冒険者という認識なんでしょうね。
Skyrimリマスター、英語版は今月28日みたいですね。でも個人的に一番の楽しみは、新しいCreation Kitの方だったりします。今でも確実に、ゲームで遊んでいる時間よりCKをいじっている時間が長いくらいですし(汗)
既存MODのリマスター対応作業、あまり手間がかからなければいいのですが……。こればかりはその時になるまで分からないんでしょうね。
アルゴニアン日記もうまくデータ移行ができれば、リマスター版の方で続きがしてみたいなぁと考えています。幸い簡単なMODしか入れてないデータなので、移行テストには最適かもしれません。
MOD周りで色々心配が尽きませんけど、きれいになったスカイリムで冒険するのが待ち遠しいですね!