ダークウォーター・クロッシングで一泊し、翌朝気持ちも新たにウィンドヘルムへ出立した。
デルキーサスの件については、また今度対処することにしよう。今の私では、あの化け物に敵わない
今日も行く道の右手に川が流れている。さすがに川下りはやめておくか。いい年をして昨日は少しはしゃぎ過ぎたと反省している。
それでもなんとなく街道ではなく水の中を歩いてしまうのだが。
平和な道だ。狼ともすれ違わない。
しばらく行くとようやく他の旅人の姿が見えた。
彼はストームクロークに加わるため、ウィンドヘルムを目指す農民だった。
ストームクロークの多くはスカイリムを故郷とするノルド達だが、スカイリムを故郷と考える者はそれ以外にもいるようだ。
農民の話を聞きながらしばらく歩くと、道の傍に小さな集落が見えてくる。
集落は製材所だった。労働者達の姿はなく、女主人が一人で忙しく立ち働いている。
戦争が始まった時、労働者達は逃げ出してしまったそうだ。
血の代わりにハチミツ酒が流れている連中……。そういえばリフテンに向かう道で会ったかもしれない。彼らは三人組だったが。
ホワイトランからだいぶ北の方へ来ている。本来ならホワイトラン以上に寒い気候になりそうだが、意外とこの辺りの道は暖かい。どうやら川の東側の火山地帯から地熱がきているようだ。熱のおかげで、そこかしこにジャズベイブドウの茂みも生えている。寒いスカイリムでは珍しい。一粒つまんでみたが、酸っぱかった。そして少し魔法に弱くなった気がした。
平和な旅をのんびり楽しんでいると、狼の死体に出くわす。どうやら先に進んだ農民が倒したようだ。なかなか頼もしい。
昼近く、ようやく道の先に巨大建築物らしき影が浮かんでくる。
ここがウィンドヘルムか。スカイリムでも非常に古い都市だと聞いている。
都市を望める崖の上に、巨大なタロス像が町を見守るように建っていた。
シャウトが使えたという、セプティム朝最初の皇帝だ。彼に祈れば声の力に加護が得られるらしいが、やめておこう。私はアルゴニアンだし、巡礼以来キナレスのお世話になりっぱなしだから、彼女を一番に信仰したいのだ。
都市の厩に馬車の発着所がある。
御者は旅人である私に、ウィンドヘルムを閉鎖的な場所だと教えてくれた。歴史が古いだけあって、住人は保守的なのだろうかと想像する。
実際ダンマーとアルゴニアンには特に風当たりが強いらしい。
都市の住民ならともかく、通りすがり程度ならさほど迫害は受けないだろうが、行動には十分気をつけろとのことだ。こういった情報はありがたい。
なかなか手ごわそうな都市だ。用事を済ませたらなるべく早く立ち去るのがいいだろう。
私は、リフテンの開放的な雰囲気とは真逆の、冷たく重い威圧に満ちた門をくぐった。
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