雲が多いが、恐らく雨にはならないだろう。
ホワイトランからイヴァルステッドへ向かうのは初めてだ。幸いリディアが道を知っているとのこと。地元の人間が案内してくれるのは頼もしい限りだ。
ホワイトラン周辺は衛兵が見回って安全だが、少しでも離れると街道には狼が獲物を探してうろついている。
獣の影が濃いのはスカイリムの自然の豊かさだろうが、旅人にとってはたまったものではないな。幸い私にはまだキナレスの祝福があるので、襲われはしないのだが。
道中、こちらに向かってボロ布を来た女性が走ってきた。身なりからして脱走した囚人にも見える。
私の予想はおおむね当たっていた。彼女は山賊に捕えられていた囚人だった。隙を見て逃げ出し、誰かに助けを求めていたようだ。ホワイトランまで送ろうかという申し出を、彼女は町の方角さえ教えてもらえば大丈夫だと断った。それよりも第二第三の被害者を出さぬために、ミストウォッチ砦の山賊を退治してほしいという。
一旅人として、山賊の噂は捨て置けんな。覚えておこう。
町の方角へ走り去る女性を見送ろうとして、私は先ほどの狼を思い出した。
いくらなんでも素手の女性があれに襲われたらひとたまりもない。
慌てて彼女の後を追った私達だが、追いついた時にはもう、彼女は狼を素手で殴り殺して立ち去りかけるところだった。
……スカイリムの女性は逞しいものだ。
ホワイトランからイヴァルステッドまでの道は二つ。
一つは、道なりに進んでヴァルトヘイムタワーという関所を通る道。リディアの話では、あそこは山賊が陣取っていて、旅人から通行料をせしめているらしい。
もう一つは、タワーの手前で東の山岳地へ入る道らしい。こちらは野生の獣に気をつける程度なのだとか。
いざその道へ分け入るも、これはかなりの急勾配だ。
雪の積もる高度まで登ったところで、天気の方は下り坂真っ逆さまである。
リディアに何度も本当にこの道でいいのかと確認を取りつつ、雪をまとって真っ白になった針葉樹の林を凍えながら進む。
寒さのあまり尻尾がちぎれかけるところで、道は下りに変わった。雪は消え、空も晴れてくる。土の地面が見えてきてほっとした。
山岳地の東へ抜けたようだ。ひどい難路だった。ノルドにはあの程度の山道や雪は平気なのだろう。今後リディアに道案内を頼むときは、用心せねば。
ささやかな山道が我々を導いてくれる。
ここには関所か何かがあったのだろうか。道の近くに廃墟が広がっていた。古井戸もあったから、山村でもあったのかもしれない。
夕暮れ時、ようやく世界のノドの足元までたどり着けた。イヴァルステッドまであと少しだ。
星が輝き始めるころ、私達は宿屋ヴァルマイヤーで暖かなハチミツ酒にありつけた。
やれやれ、懐が寂しい。これ以上リディアの食費まで捻出するのは難しいな。明日は私一人で山へ登ろうと思う。
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