空腹に耐えかねて目覚めるも、まだ日の出の時間にすらなっていなかった。
じっとしているわけにもいかず、星の輝く早朝に出立する。
薄暗い山道で、ストームクロークの捕虜を連れた帝国兵一行とすれ違う。
ヘルゲンでの一件があるゆえに自分も捕えられるのでは、と恐れて思わず顔を伏せたが、彼らの目に私はただの邪魔な放浪者としか映らなかったようだ。
雪の残る山道を抜けると、気持ちの良い白樺の森に出た。
獣の影も濃い。じゃれついてくる狼に手を焼きながら先を急ぐ。昨夜はともかく、今日からはなるべく野生の獣は殺さないと心に決めたのだ。少なくとも自分自身の為だけには殺さないと。
とはいえ内心煩わしく感じていた狼。通りすがりの旅人が始末してくれた時には少しほっとした。
どこかで見た顔だと思えばこの旅人、ヘルゲンで死刑囚の点呼中に間を横切っていった司祭である。
あの時彼は私の顔を間近で見ていたはずだ。一瞬お互いに見つめ合い、彼はいまさらな朝の挨拶を、私は狼退治の礼を言って別れた。
人間種にアルゴニアンの人相を見分けるのは難しいだろうが、彼も私の顔に見覚えがあると感じていたのかもしれない。
司祭と別れて間もなく、背後から突如重たい足音が響いたかと思えば、私は後ろを確認する間もなく倒されていた。
気が付くと、衛兵が側にいる。村の近くでクマに襲われた私を見て、助けに出てくれたらしい。
そうか。私はクマに襲われたのか。しかし頼もしい衛兵達である。
ここはイヴァルステッドという小さな村らしい。のどかで平和そうだが、村のはずれには不気味な墓所もあった。
この村はまた、世界のノドとも呼ばれるスカイリム最高峰の山への登山口でもあり、山にある修道院への巡礼者も受け入れているそうだ。
この橋の先から山へ登れるらしい。
手前で村人達が立ち話をしているが……。
クリメクという村人が、修道院への食料を手にしていた。以前から山へ登っては善意で食料を届けていたそうだが、年齢的にきつくなってきたらしい。今回も供物を用意したものの、登るのに二の足を踏んでいたところだという。
代わりに届けに行けば報酬を出してくれるそうなので、引き受けることにした。今の私は無一文だ。わずかな報酬でもありがたい。
山登りの前に小銭を稼いで朝食をと思い、畑仕事の手伝いを申し出る。
そんな中、衛兵達の噂話が耳に飛び込んでくる。例の反乱軍の首領の罪状の一つだった上級王殺しだ。
村人によれば修道院に暮らすグレイビアードという僧侶らも、人を殺せる声を持つらしい。同じ力だろうか。あの時、首領がさるぐつわをはめられていたのは、彼の声そのものが凶器になるからだったのか。
畑仕事で得た小遣いで、朝食をとる。
焼いた鮭にパンとバター。これで稼ぎは全て消えた。
頼まれた供え物を届けたら、もう少し量の多い夕食にありつけるかもしれない。
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