目覚めると私は知らない場所にいた。天気が悪いせいかずいぶん視界が暗い。
なぜ私はここにいるのだろう。
これまでの記憶を一切失っていることに気付くまで、さして時間はかからなかった。
ロキール:連中がお前らを探してるんじゃなかったら、馬をかっぱらってとっくにハンマーフェルへとおさらばしてたさ。
同乗者達。
彼らの会話から、我々は囚人としてどこかへ運ばれているらしいのが分かる。
レイロフ:言葉に気をつけろ。お前は上級王ウルフリック・ストームクロークと話をしているんだぞ。
しかも私の隣に座るノルドは、反乱軍の指導者だとか。
状況に合点はいかぬが、この時点で死を覚悟した。この怯えきっている馬泥棒同様、私は帝国軍の大捕り物に巻き込まれたのだろう。その最中に頭を打って気を失い、当たり所が悪く記憶も吹っ飛んだとみえる。
見知らぬ土地で見知らぬ村が見える頃、ようやく空が晴れてきた。
金髪碧眼という典型的ノルドの外見を持つ反乱軍兵士が、ここをヘルゲンだと言っている。
ジュニパーベリー入りハチミツ酒を作る宿があるそうだが、旅人として訪れることができなかったのは残念だ。
処刑場に到着し、囚人たちの名前が読み上げられる。
点呼中、通りすがりの旅人が間を横切って行ったが、不用意に民間人を囚人に近づかせるのはいかがなものか。
同乗の馬泥棒は逃亡を試み、あえなく最初の死者となる。
「気の毒に」と同情を示した名簿をとる帝国軍兵士の口ぶりからするに、彼らも私が単に捕り物に巻き込まれただけというのは知っているらしい。馬泥棒も私も、運がなかったと言うより他にないが。
帝国軍将軍が反乱軍の首領に罪状を告げる中、奇妙な咆哮が遠くで聞こえた。
帝国軍隊長:次、そこのトカゲ!
奇妙な咆哮はとりあえず無視され、囚人らの処刑が始まる。
彼女が私をトカゲというので、とりあえず「トカゲ」を名乗ることとしよう。今後というものが私に残されているのであれば。
この処刑人は腕がいい。先の囚人の頭を一刀にして切断していた。彼になら私の首を任せてもよかろう。
しかし、またしても咆哮が聞こえる。
うーむ。私はなぜこのような化け物の飛び回る地の近くをうろうろしていたのか。
激しい後悔が今にしてよぎる。
処刑人は竜の咆哮で吹き飛び、私は竜に焼き殺される運命に変わったらしい。
ところが、名簿を取っていた兵士が割って入ってきた。彼は逃げろという。
親切な若い兵士の後に続いて、火の海となった村を逃げる。もはや反乱軍の処刑どころではない。処刑見物に来ていた村人達も次々と炎に巻かれている。
帝国軍将軍はいち早く陣頭指揮を執り、竜との戦闘を始めていた。
若い兵士の姿を認めて、「囚人を連れて早く逃げろ」と怒鳴っている。将軍も、私が少なくとも反乱軍でないことを知っていたようだ。
いっとき姿の見えなくなっていた反乱軍兵士が、再び姿を現した。
ハドバル、レイロフと互いの名を呼びあって牽制する彼らを見るに、顔見知りではあるらしい。
この地では竜の他に、厄介な戦乱も起きているようだ。
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